住宅ローンを完済するなどして、抵当権が実体上消滅した場合に、申請する抵当権抹消登記は、抵当権者である金融機関と、所有者の共同申請ということになります。
抵当権を抹消する対象の不動産が共有である場合も、原則として、抵当権者である金融機関と、共有者である複数の抵当権設定者の共同申請となります。
共有者の一人からの抹消登記申請
もっとも、共有不動産の抵当権抹消については、共有者の一人から、登記を申請することができます。
この根拠となるのは、民法252条但書にある「保存行為」であるとされます。
共有物に変更を加える時には、共有者の全員の同意が必要とされ(民法251条)、また、共有物の管理に関する行為には、持分価格の過半数で決定することが必要と規定されています(同252条本文)。
これに対し、共有物の保存行為は、各共有者が行うことができると規定しているのが民法252条但書です。
抵当権抹消の登記申請は、既に実体上消滅している抵当権について、登記記録の抵当権を抹消することにより、実体に登記記録を合致させるという手続ですので、共有物の「保存行為」と考えられるから、共有者の一人からの申請でも受理すべき、としたものと考えられます。
この場合、申請書には共有者全員の住所・氏名を記載した上で、申請人となる共有者の氏名の前に「(申請人)」と記載することで、登記権利者としては共有者の一人から申請することが可能になります。
不動産が複数ある場合
それでは、土地が単独所有、建物が複数者による共有の場合の、土地建物に付着する共同抵当権を抹消する場合はどうでしょうか。
例えば、土地の所有者がA、建物の所有者がA、Bという場合に、Aが単独で土地・建物の抵当権抹消の登記権利者になれるでしょうか。
この場合でも、土地についてはAが申請人となるのはもちろん、建物については、Aが保存行為として、権利者・申請人として、抵当権抹消登記を、土地・建物について一括して抹消登記の申請をすることができます。
他方、建物の共有者という地位しか持たないBさんから、土地・建物の抵当権抹消登記の一括申請はできません。Bさんには土地の権利がないからです。
共有者の一人が死亡している場合
抵当権が抹消された時点で、不動産の共有者がA,Bであり、Bが既に亡くなっている場合でも、Aによる抵当権抹消が可能です。
やはり共有物の保存行為として、共有者の一部からの登記申請が認められると考えられるからです。
まとめ
以上のように、抵当権抹消は、一部の共有者からの登記申請が可能です。
もっとも、司法書士に依頼する場合、司法書士が資格者代理人として、共有者全員からの委任を受けることや、共有者全員に本人確認や登記申請の意思確認をすることはあります。
登記申請自体は保存行為として可能だとしても、原則として設定者全員での申請が原則ですし、抵当権設定者として、抵当権が実体上消滅しており登記記録からも抹消すべきであるということを把握することは重要です。特に、債務者ではない抵当権設定者(物上保証人)に対して、抵当権が消滅したということを知らせることは必要なことと考えます。
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