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執筆者の写真ゆかり事務所

認知症対策の必要性

更新日:2023年5月26日

 高齢社会の進展とともに、生前の相続対策と同様に必要となるのが認知症対策です。相続への対策を検討していても、認知症対策もしておかないと、生前の相続対策が困難となることも多いのです。今回は、認知症対策の重要性とともに、認知症発症が相続対策にどのような影響を与えるかを考えてみたいと思います。



認知症が進むと意思表示が難しくなる

 認知症が進み、判断能力を欠くような状態になると、正確な意思表示ができなくなります。法律行為は意思表示により行うので、意思表示ができないとなると、あらゆる法律行為ができなくなります。

 例えば、契約の締結。不動産の売買契約や賃貸借契約は、意思表示ができないとそもそも締結できません。代理人を立てようとしても、代理をお願いする委任契約の意思表示ができないので、これも無理です。遺言書を書くためにもきちんと自分の意思表示ができることが必要です。認知症等できちんとした意思表示ができないような状態で、遺言を作成しても無効となってしまいます。



法定後見制度では生前対策が制限されることも

 認知症などで判断能力が失われた場合、契約締結や遺言、遺産分割協議などの法律行為や財産管理などは行えなくなるため、現時点で可能な選択肢としては、法定後見制度を利用することになります。具体的には家庭裁判所が選任した成年後見人等が、必要な行為を代理で行います。

 成年後見人というのは、ご本人に必要な法律行為や財産管理等を、あくまでご本人の利益のために行う法定代理人ですから、ご本人の財産を減らすような本人の不利益になるような行為をすることは基本的に認められません。したがって、例えば相続税の節税対策など、ご本人の資産を減らして税金を圧縮するような生前対策は、基本的に推定相続人の利益のために行うものですので、できなくなることが考えられます。


検討すべき認知症対策

 そこで、判断能力がしっかりしているうちに、相続対策とともに認知症対策も検討しておく必要があります。

 前述した通り、認知症となって判断能力が失われてしまった後に、法律行為や財産の管理・処分をするためには、現状では法定成年後見制度を利用するほかなく、判断能力が減退したときに法定後見制度を利用したとしても、ご本人の意向で代理人となる成年後見人を選ぶことは難しいといえます。そこで、判断能力があるうちに、ご自身の信頼できる後見人を事前に選んでおける、任意後見制度の利用が考えられます。財産管理契約と組み合わせて任意後見制度を利用することで、判断能力があるうちから、認知症を発症してしまった後の管理まで継続して信頼できる後見人に、財産管理を任せることも可能です。

 また、賃貸不動産などの財産管理を任せられる家族がいる場合は、事前にその家族に賃貸管理等の資産管理を任せる契約を結んでおく家族信託の利用も考えられます。家族と信託契約を締結することで、信託財産は委託者であるご本人から、受託者(財産を信託されて管理等を行う役割の人)である家族が管理することとなります。家族信託を利用することで、認知症になった後も継続して、受託者である家族が、財産処分などの行為を行うことができます。


認知症対策、相続対策にもなる遺言書の作成

 何よりもまずご検討していただきたいのは、遺言書の作成です。判断能力があるうちに、ご自身の相続発生後、財産を誰にどのように承継させるかを決めておくことは、一番の認知症対策、相続対策となります。遺言書の作成は、公証役場で作成する公正証書遺言をお勧めしています。自書して行う自筆証書遺言もありますが、遺言内容を確実に有効なものとして、相続開始後にきちんと実効性のあるものにするためには、証人を二人立てて公証人の認証を経る公正証書遺言によることが最も安心です。


関連記事⇒遺言作成のすすめ


 ご自身の資産管理と承継をきちんと行うために、相続対策と同時に認知症対策も是非、検討していただければと思います。


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